Research of manpower supply business field.

他に類のない派遣業界幹部向けの会員制メールマガジンを発行し始めて4年になります。派遣業界に 関する話題を斬新独特の切り口で取り上げ、多くの派遣会社管理職の皆様に愛読いただいております。そのバックナンバーの一部を御覧下さい。

東田康之

派遣スタッフ時給は上がっているか
一般に価格は需給の力関係で決まります。供給に比べて需要が多いと価格は上がり、需要に比べ供給が多いと価格が下がるというのは経済学の教科書の基本中の基本です。これはサービス業に分類される人材派遣にも当てはまり、スタッフの時給水準は、求人数と求職者の需給動向で上がりもすれば下がり
もする市況価格であるといえましょう。

そこで現在の求人とスタッフの需給動向はどうかといえば、言うまでもなく、圧倒的なスタッフ不足で、皆様の会社でもスタッフがいなくて引き当てできない求人が「野ざらし」で山と積まれていることでしょう。それでは経済の法則どおり、需給逼迫のスタッフ時給は上がっているはずです。しかし、スタッフ不足の悲鳴は聞くが、募集時給が上がっているという客観的データは実は見当たらない。日経新聞のたまに出る時給アップ記事にしても一部大手派遣会社への取材のみで構成され、実証データでは裏付けられた記事は見たことがありません。そこで市況通信今号ではその実証調査に挑戦します。


さてスタッフ支給時給に関するデータで思い浮かぶのは
  ①厚生労働省平成18年度派遣事業 事業報告の「派遣労働者の賃金」の経年比較
  ②リクナビ派遣の職種別平均時給の経年比較

①は全国の派遣会社の事業報告の集計ですので報告した全事業所のデータを含みますが、残念ながら各事業所ごとの派遣労働者の賃金を単純平均したもので人数加重平均ではありません。大手事業所1000人の平均賃金(高い場合が多い)と小規模事業所50人(安い場合が多い)の平均賃金とが単純平均さ
れています。また地域別の資料はなく全国一本。

②は地域別ですが、経年比較がとりにくい。なぜならおりからのネット媒体ブームで参画社数が飛躍的に伸びていますので、もし安い時給の派遣会社がこの期間に大量参画したら、時給の平均伸びは落ちます。同一会社の間での推移ではないことをお断りせざるを得ません。

それぞれ欠点があることを認めつつもこれらしか思いつかないのでこれで調べてみましょう。


まず①の調査に取り掛かります。最新の平成18年度と2年前の平成16年度の派遣事業報告の該当部分を取り出して(最新版はこちらの表10から 
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/12/h1228-2.html )、日給数字を8時間で割って時給換算して18年度を16年度で除して伸び率を出す、、、注目は5号の事務用機器操作職です。
       
うーんこれは何と!伸びているどころか下がってます。(添付資料①)

事務用機器操作2年間で▲10.1%です。添付①は26職種中、主だった16職種の時給平均の2年対比表ですが、7職種でマイナスです。また26職種と新職種をあわせた全職種においても▲7.4%でした。まったくお話にならない、、、。なぜこんな結果になるのか?私の推測は、この2年間で急激
に増えた事業所数(9273→18028)が原因ではないかと。2年間での純増数8755というのは平成16年度の全事業所数(9273)に匹敵します。こんな短期間にこれだけ増えた派遣事業所とはそも何者か? たぶんアウトソーシング系と自由化専門分野系で、事務派遣系は少ないのではないのでしょうか?そしてこれらの派遣免許取立ての派遣事業所でも事務派遣系の職種には派遣していて、しかしそれらは本業分野ではないだけに高い時給は請求できていないのでスタッフにも低い時給しか支給できない。そしてたかだか稼動スタッフが数人の事業所平均が大手1000人事業所のそれと単純平均されて平均数字を引き下げてしまう、、、。いかがでしょう。

さて厚生労働省資料には挫折しましたので次に②のリクナビ派遣で調べます。
データ元はこちらです。
http://rikunabi-haken.yahoo.co.jp/h/r/HS1Z130n.jsp?disp=%2Franking_j%2Fk%2Findex&g=K&cmd=INIT

これには昨年11月の職種別平均時給が載っていますが、これを一昨年の12月14日発信の 市況通信195号<スタッフ時給は上がっているか 最新データで検証>で調べた作った資料に1年後現在掲載のデータとして付け加えれば3年推移が見れます。できました。添付資料②です。結果は、、、。

上昇しています。
しかしめでたさも中ぐらいで、取り上げた関東、東海、関西の一般事務、営業事務、営業職、販売職のうち、3年間で5%以上UPしたのは関東・東海の販売職のみ。うーん渋い上がりかただなあ、、、。直近の1年の伸びを見ると1%以下がほとんどで、関西なんか下がってますがな、、、。
資料②じっくりご覧ください。


さて今回のテーマ<派遣時給は上がっているか>の結論は、「事務職と営業職については少ししか上がっていない。需給の逼迫を表す上がり方とはとても言えない」ということです。これは正社員の状況と似ていますね。人不足で、新卒中途とも採用好調といわれますが初任給、給与上がっているとは聞きませんがそれと同じ、、、。人不足下で給与上がらず、という経済学教科書外の事態といえましょうか。


最後にご参考までに昔はどうであったかを私保存の古い資料でお見せしましょう。私が親会社リクルートからリクルートスタッフィング(当時シーズスタッフ)に転籍して大阪支社を立ち上げたのが1990年1月。当時37歳でした。若かったなあ、、、。添付の③は1990年10月の日付がありますが、私がとらばーゆで拾った大阪派遣各社の最低支給時給表です。当時はワープロが普及しだした頃でしたが私はまるでOA駄目でしたので手書きです。数字で120とあるのは1200円のことです。当時はこの最低時給の底上げ競争が常態化していました。私は90年1月に大阪業界最高給の1300円で参入しました。表で上段に「旧時給」とあるのは1月時点の他社の最低時給。「時給」とあるのは3ヵ月後の4月に時給UPした数字。左端の「up額」はその4月up額でここだけ1円単位。UP幅のすごさを見てください!矢印はその後半年後の10月のUPです。シーズは50円上げて1350円にしました。それでもすぐに抜かれました。もちろん現稼動者も全員底上げでした。当然顧客には値上げお願いできていたのです。値上げトークは「貴社もベースアップあったでしょ」
                      良き時代でした。