他に類のない派遣業界幹部向けの会員制メールマガジンを発行し始めて4年になります。派遣業界に 関する話題を斬新独特の切り口で取り上げ、多くの派遣会社管理職の皆様に愛読いただいております。そのバックナンバーの一部を御覧下さい。
東田康之
金額の大きいスタッフ募集費を損益計算書上の原価に計上するか一般管理費販売費に計上するかで原価率、一般管理費販売費比率は1-2%の違いが出てきます。これをどちらに計上するかは会計ルールに特段の規定はなく、派遣各社バラバラであるとの印象を受けています。そこで実態を調べてようと市況通信の会員様にアンケートお願いしました。
質問文章は
皆様にアンケート
スタッフ募集費は皆様の会社の損益計算書では
1.原価で計上
2.一般管理費販売費で計上
どちらでしょうか?私の前職会社では1でしたが、どうも決まりが無いようなのでお聞きします。1か2かこのメールへの返信でお答えください。
さてこのアンケートに対し回答が続々と帰ってきました。アンケート結果の詳細は添付資料を御覧頂くとして、集計結果のみを申し上げると、以下の通りです。
この質問への担当者様のお答えぶりで感じたことは、昔(創業時)に決めたことを踏襲して今に至るので、決めた当時の理由はよくわからない、というものです。会計ルールには継続性の原則というものがありますので疑問があっても途中で変えることは難しいのでしょう。また今回のテーマであるスタッフ募集費の計上先は、計上費目の定義を見ますと、原価、販売費、どちらにでも取れる性格を擁しているように思えます。従って集計結果は2が1を大きく上回っておりますが、回答に付けられたコメントを読む限り、「後ろ髪を引かれながら」2に分類されておられる会社も結構多いように見受けます。
さて時間がありましたので、今回アンケート発端の158号の営業利益率特集で取り上げました上場派遣会社6社について財務諸表の詳細を調べたりIR担当室に問い合わせましたところ、結果は、原価計上している会社はテンプスタッフ1社のみで他の5社は全て一般管理費・販売費計上でした。
また私の前職であるリクルートスタッフィングは原価に計上している少数派ですが、引退した初代社長にその理由をメールで問い合わせましたところ、以下の返信が来ました。
『東田さま
お問い合わせの募集費を原価に計上した理由ですが、
1.言葉は悪いですが、
「商品を作りだすための材料費」は原価だからです。(メーカーではそうなっています)
2.売上高に占める経費の割合は、経営努力や工夫によって下げることができますが、募集費
の売上高に占める割合は、将来にわたっても下がる性格のものではないと、当初、判断し
たからです。』
上記2の記述は、会計の本にある「売上原価とは、売上げに比例して増減する費用で一般的に変動費と呼ばれています。」という部分を意識したものであったと思います。
次に人材紹介会社ではどうか。原価と呼ぶべきものが無い高収益事業においてビジネスの種である登録者の募集費はどちらに計上しているか?業界最大のリクルートエイブリック(4月1日よりリクルートエージェントに社名変更)は一般管理費・販売費に計上です。2代目の社長に同じく理由を聞いてみましたところ次の返事です。
『東田さん
お問い合わせの件 返事が遅くなり失礼しました。
エイブリックでは登録者募集費は販管費の広告宣伝費でした。
その理由を特に検討したことはなくそれが当たり前としか考えていませんでしたが何かお聞
きになりたいことがあれば直接経理担当に聞いて見ましょうか? 』
創業社長の決めたことを継承した風が文面から読み取れますが大方はこんなものでしょう。ちなみに業界2位のインテリジェンスも一般管理費・販売費計上です。
さて、スタッフ募集費は原価か管販費かどちらに計上するのが正しいかについてはこれでお判りいただいたかと思います。「どちらでも間違いではない」、ということで一件落着です。特に監査法人のチェック厳しい上場会社でテンプスタッフが原価計上で通っているのですからこのことは間違いありません。
さて最後に東田の意見を言わせていただければ、私は原価への計上を支持します。派遣会社のスタッフ募集費は商店でいう「仕入れコスト」、メーカーでいう「製造原価」に例えられるという意見がすうっと体に入りますので。特に昨今、派遣会社の経営を左右するのはスタッフ募集力であり、経営者の頭は募集力の強化で埋め尽くされている状況で、スタッフ募集の費用が「経費の中の、販売費の中の、広告宣伝費」という位置に押し込めるのは、この費目の存在の意味、重要性から見て「役不足」ではないでしょうか。会社の経営中枢である役員を従業員用社宅の一室に住まわせるようなもので失礼ではないかという感じが否めません。皆様いかがでしょうか?