Research of manpower supply business field.

他に類のない派遣業界幹部向けの会員制メールマガジンを発行し始めて4年になります。派遣業界に 関する話題を斬新独特の切り口で取り上げ、多くの派遣会社管理職の皆様に愛読いただいております。そのバックナンバーの一部を御覧下さい。

東田康之

派遣社員の社会保険負担額

2月24日の日経新聞土曜版別冊「NIKKEIプラス1」に派遣社員の社会保険の基礎知識をまとめたなかなかボリュームのある記事が掲載されました。派遣会社内でもこの内容をしっかり理解している社員は少ないかもしれませんので添付しますので社員の皆さんにも配布ください。

この記事からおさらいをしますと

  1. 加入要件は派遣社員の場合週30時間以上が目安。
  2. 保険料率は給与総額の24.442%(健康保険8.2%、厚生年金14.642%、 雇用保険1.6%)でこれを派遣会社と本人が12.221%ずつ折半する。
  3. 派遣健保の健康保険料率は5.3%で政府管掌の8.2%より2.9%も安い。   
    派遣会社、本人とも1.45%お得。
  4. 月収24万円の派遣スタッフの社会保険自己負担総額は2万9330円。
    健康保険   9840円(政府管掌)
    厚生年金 1万7570円
    雇用保険   1920円

約3万円とは結構な金額ですね。月収24万円が21万670円に減ってしまいました。ここに所得税と住民税、、、。いやいやこれは正社員でも一緒ですね。ここで1.45%安い派遣健保の値打ちが出ます。3480円助かるのですね。日本人材派遣協会は大変いい制度を作られました。設立のご苦労に心から敬意を表します。

ところで社会保険会社負担分でもある12.221%というのはスタッフ給与に対する割合ですが、派遣会社の売上に対する割合で言うと、支給ー請求の粗利率を72%とすると、8.8%となります。時間請求2000円、スタッフ支給1440円で176円! これは大きいですね。


ここで10年前の事件を思い出します。1997年、会計検査院が人材派遣業界を一斉検査したのです。結果、派遣労働者の半数近くが未加入で、未払い分総額は200億円前後に上ることが明らかになったのです。当然追徴ですが、今さらスタッフに過去に遡って支払いを求めることはできず、全額派遣会社負担となったのです。この一斉検査では業界上を下への大騒ぎ。親しい派遣会社幹部同士が「おたくはもう入られた?」「いやうちは来週。どんな書類出さされるの?」なんて情報交換が飛び交いました。会社の会議室に陣取った担当官が提出させた給与支払い台帳にバンバン赤の付箋を貼っていくのを見て真っ青になったとは中堅派遣会社社長の弁です。それはそうでしょう。時間給にして176円負担アップになるのですから。

いまでこそ社会保険加入対象者は全員加入させるのが当たり前になっておりますが、10年前はそうではなかったのです。名だたる大手や資本系派遣会社にしても全員入れておりませんでした。要求してくるスタッフには加入させるが、言ってこないスタッフにはあえて案内しない、という消極的スタンスでした。当時よく入れているところで加入率50%ぐらいではなかったでしょうか。もともと永年の営業で構築された支給ー請求の価格体系には社会保険全員加入は想定されていなかったのです。それが全員加入となるとこの負担はもろに経営を直撃します。なにぶん時給にして176円(上記)です。

時現役支社長であった私もあわててクライアントに請求金額アップのお願いに廻ることになりました。せめて負担増分の半分ぐらいは顧客にも負担していただこうというわけです。営業課長や営業マンを同道して大口顧客を廻りました廻りました、、、、、。そこで値上げ趣旨理解いただいたのが5割、拒否されたのが5割。後者の理由は『社会保険は雇用者と被雇用者との問題で、派遣先は雇用関係にないので関係ないだろ?』 おっしゃるとおりー、頭いいーと座布団1枚あげたくなる反論には窮したものです。

この事件で派遣業界の利益率は確実に落ちました。でも加入促進したおかげで派遣で働こうとする方が増えて今日の業界規模になったわけですから禍福はあざなえる縄の如しですね。

パソナは2003年10月の東証1部上場時には社保加入100%必達のため加入拒否者には契約延長しないという荒業に出たとは語り草です。

派遣業界の幹部も新陳代謝が進んで10年前の一斉検査大騒動を知る方もだんだん少なくなってきました。そこで私が後生大事にファイルしていた10年前の新聞記事をお目にかけます。インクが滲んで読みにくいですが何とか読めると思います。当時の空気が伝わりましょうか。