この通信の読者様の会社で人材紹介免許をお持ちでない会社は1社も無いはずですが、その免許取得動機はほとんどが紹介予定派遣を行うが為で、年収の30%をいただく「本格紹介事業」を「本格的に」進めておられる会社は数少ないと思います。またたとえあったとしても「道半ば」の状態ではないでしょうか。
しかしこの分野への進出を全く考えていない派遣会社は少ないはずで、何と言っても売上高が張る割には利益の少ない派遣業に比べ、売上は小さくとも利益率の高い人材紹介は派遣会社経営において魅力で、収益の第2の柱に育てたいお気持ちの経営者は多いと思われます。事実、派遣大手のパソナはパソナキャリア、テンプスタッフはテンプスタッフキャリアという紹介子会社を持ち、両社とも大きな成長を遂げています。
しかし私が見聞きする範囲では上の大手2社(+インテリジェンス)以外の派遣会社の紹介部門はそれほど成果を上げているとはいいきれず、むしろ苦労されておられるケースのほうが多いのではないでしょうか。派遣と紹介の二つを経験している私に言わせればそれももっともなことで、
人材派遣と人材紹介を「人材ビジネス」という枠でくくれる兄弟事業と思ったら大きな間違いで、この2業種は似て非なるビジネスモデルと断言してよろしいかと確信します。したがって人材派遣事業の立ち上げに苦労してここまで来られた派遣会社といえど、紹介事業部門の立ち上げにはまた同じぐらいのパワーと時間が必要で、派遣事業の財産を発射台にしてより軽い負担で飛び上がれるわけではないのです。
もしこの通信をお読みの方が派遣会社の社長の場合は、派遣業に付いては精通してこられたでしょうが、自社紹介部門については実務経験は全く無いまま(もっともなことですが)報告を聞いたり経営判断をくだすことも多かろうと思われます。その時に、紹介業について何かいい参考資料がないかと思われる向きに推薦したい書籍を見つけました。
今回のテーマは実はこの本の紹介が目的なのです。えらい前置きが物々しくてスイマセン。
山本直治著『人材コンサルタントに騙されるな』(PHP新書)
2007年7月27日発行 756円
http://www.honya-town.co.jp/hst/HTdispatch?nips_cd=9982226738
著者は33歳の元国家公務員(文部省)。何と公務員を辞めて人材サーチ会社に転職。そこでの2年の経験で書いた本がこれです。たった2年で何がわかるんかいと経験6年目の私が眉唾で読んだところ、これはいい、よくわかっとるなあと感心する内容です。本の題名が題名だけに暴露本かと思いましたが内容は至極まっとう。売らんがために新書編集長が無理やりつけさせたタイトルでしょう。
これを読むと人材紹介の実情が非常によく理解できます。読前と読後で世界が違うほど、と言ってもよろしいでしょう。自社に紹介部門を持つ幹部の皆様の必読本としてお薦めします。
見出しの一部お見せしましょうか?こんな内容です。
第3章 人材紹介業界生息日記ー悲喜こもごも
1・・・非効率ビジネスの裏側
・人材コンサルタントは魅力的な職業か?
・とにかく大変
・人材コンサルタントは夜行性?
・徒労ビジネス
・確率論にもとづく数値管理主義
・芸能プロダクションとの意外な共通点
2・・・「人対人」のビジネスがもたらす悩ましさ
・人材との相性
・転職サポートが楽な人、大変な人
・コンサルタントは振付師
・トンデモ人材
・キャリアコンサルタントにおける葛藤
・企業の採用担当者との関係
・社内の戦いー人材担当と企業担当
・コンサルタントは何のために働くのか
人材紹介は「徒労ビジネス」、、、、よく言ってくれました。一本のヒットの裏に何本の空振りがあるか、、、。一生懸命面倒を見た候補者に「他社で決まりました」とあっさり言われたときの脱力感はやってみないとわかりません。(かく言う私も内定辞退複数くらって今落ち込んでいます。)
紹介手数料の30%というのはどうして決まったか?
著者曰く
『1件の成約のために、実際はその数倍から数十倍の「空振り」(応募見送り、不採用、内定辞退など)が発生する。つまり、人材紹介業は「確率のビジネス」でもあるのだ。この視点から考えると、そもそも手数料率30%という業界水準はどのようにして決まったかということも見えてくるのではないだろうか。手数料を支払う企業側も採用コストとして承服でき、かつ人材紹介会社の経営も成り立つ均衡点として、日本の人材紹介業の草創期からの歴史の中で定まってきた数字なのだと』
どうぞ推薦本お読みいただいて紹介部門の方々の苦労を疑似体験ください。最後に紹介と派遣の対象職種規制緩和の対照年表を作りましたので添付します。派遣業界にとって1999年の原則自由化はまことに大きな追い風でしたが、実は同じ年に紹介業界でも原則自由化が行われたのですね。1999年は両業界にとって記念すべき年でありました。