他に類のない派遣業界幹部向けの会員制メールマガジンを発行し始めて4年になります。派遣業界に 関する話題を斬新独特の切り口で取り上げ、多くの派遣会社管理職の皆様に愛読いただいております。そのバックナンバーの一部を御覧下さい。
東田康之
以下は日経情報ストラテジー9月1日号の記事です。まずお目通しください。
リクルートスタッフィング、ママさん営業部隊活躍中
人材派遣大手のリクルートスタッフィング(東京・千代田)が、産休から復帰した女性社員だけで構成した営業部隊を今年4月に組織した。幼児を抱える女性社員は通常、営業職に戻るのが困難。様々な営業の業務から残業時間が少ない業務を切り出して、同じ境遇の社員を集めて任せることで助け合うという試みだ。
リクルートスタッフィングでは2000~2001年にかけて様々な人事制度の改革に取り組んだ。その1つが「V職制度」。VはVariationを指し、多様な働き方を支援するものだ。V職には「介護V職」と「育児V職」の2種類あり、対象者は期間中の勤務時間と給与が通常の8割となる。育児V職の場合は、産休明けの社員と小学1年と2年生の子供を持つ社員が対象だ。期間は最長で2年間。
一度、V職になっても復帰後の管理職への道は開かれている。同社の総務部人事課の松野あゆみ人事課課長は、育児V職を「育児と仕事の両立を支援する期間」と説明する。実際、育児V職空けの女性社員3人を率いることになった手塚文ビジネスソリューションディビジョン市場開発部営業推進課課長も、今年2月末にV職から通常のフルタイム業務に復帰したばかり。
市場開発部の営業推進課は、今年4月の組織改変で誕生した新しい部署。派遣の要請があった新規顧客に対する提案営業が主な仕事となる。既存顧客とのやり取りが中心の部署だと残業が多くなりがちだが、インバウンド営業ならばある程度、スケジュールが調整しやすいという。
それでも営業は顧客があって成り立つ仕事。どうしても顧客の都合に合わせざるを得ない。営業部隊に1人だけV職社員が混ざっているとその周りの社員に負担をかけることもある。周囲が気にしなくても本人は心苦しい。その点、V職の社員だけの部署を作れば、短めの勤務時間や急な休みでも「お互い様」ということになる。手塚課長自身がV職経験者だから理解もある。
同じ苦労を抱える社員同士の情報共有も進んでいるという。例えば、市場開発部ではグループウエア「ビジネスgoo」を今年4月に導入しているが、携帯電話から各メンバーのスケジュールを確認する機能などを一番使いなしているのが営業推進課だという。「短時間で効率良く働くためのちょっとした知恵やノウハウを共有できるようになる」とママさん営業部隊の発案者である花木紀好BSDV市場開発部部長は話す。ただし、幼児を抱える母親ならではの悩みもある。風邪などが流行る時期には子供がそろって熱を出すこともある。事実、全員が同じ日に休むこともあったという。その後、こうした事態に備える意味もあってV職中ではない社員1人が加わった。
「会社には働きやすい環境を作ってもらい感謝している。限られた時間の中で生産性をあげて恩返しをしていきたい。課のみんなは後に続く後輩のためにもがんばらねばという気持ちが強い」と手塚文課長は語る。「モチベーションは高く営業成績はすばらしい」と花木部長は自信を深めている。
(上木 貴博=日経情報ストラテジー) [2006/09/01]
この記事をお読みになってのご感想はいかがでしょう。『これはリクルートのような大手だからやれることで、うちみたいな小規模会社でやれることではない。』というのが大方の皆様の感想でしょう。私もそう思います。「一人だけなら孤立するから育児中社員だけの部署を作る」など相当の大手派遣会社でなければ不可能です。したがってこの記事はあくまでご参考レベル、話題レベルに留めてください。
ただしなぜこんな話題を皆様に提示したかというと、派遣業界における女性社員の就労時間の長さは昔から大きな問題で、そのことには経営陣は「構造上の問題」としてやむをえないこととして抜本的な方策を採らず今に至っている事への問題提起をこの記事は示していると思うからです。
歴史的にいうと派遣業界の女性社員の就労環境は「女性を就労面で応援する」という対外メッセージとは裏腹に、大変ひどいものでありました。特に残業時間が問題で36協定なんのその、スタッフを追いかけて午後10時11時までの残業当たり前の時代が業界創業時から続いてきたのです。もちろんこれしきの就労環境は他の業界でも珍しいことはありませんでしたが、その場合、過酷な労働時間はほとんどを男性社員が負っているのに対し、「女性中心」の派遣業界は男女平等扱いの見返りに女性に過酷な職場環境であったのです。私の経験を言うと、平成元年から10年以上中途採用面接に携わりましたが、その際70-80時間の残業をできるかどうかを特にコーディネーター応募者に確認したものです。36協定なんのその、、、。当時は携帯電話もインターネットも普及しておりませんでしたので、急ぎの求人では登録者の帰宅を狙って自宅に電話するしか手段がなく、いきおい夜型の仕事にならざるを得なかったのです。これはコーディネータだけではなく、スタッフフォローする営業ウーマンも同じ状況でありました。
ここまで読まれた資本系派遣会社の皆様は、そんなに残業するものか、うちなんか30時間前後だけどな、といぶかられる向きもおありでしょう。ごもっともです。派遣会社の残業時間は独立系と資本系では大きな差があるのです。顧客が親会社の場合、後任オーダーは1ヶ月前からいただける場合が多く、ゆとりの人選ができるのですが、競争100%で急ぎの求人を取らざるをえない独立系は遅くまで残ってのマッチングになってしまいます。また独立系経営者は自分が先頭に立って創業時から遅い時間まで仕事をしていた癖で、そんな就業環境を当たり前のものと思ってしまっていますので対策考える発想にありませんでした。一方資本系経営者は親会社在籍中に女性社員をそんな遅くまで「酷使した」経験がないので、その発想はもともとありません。(だから独立系派遣会社を辞めた女性は次の転職先は資本系派遣会社を希望される方が多いのです。)
したがってここでのお話の対象は独立系派遣会社が主体になりますが、この業界はもともと独立系が発祥ですので、社風ならぬ「業界風」としては「女性が遅くまで働くのは当然」という風土が醸成されまして、入職する方もそれが当然と言う覚悟で来られたので、それが出来なくなった時には「身を引く」ことが当然という暗黙の了解があったのです。いまどき結婚で辞める方はほとんどいませんが、妊娠出産を迎えた方はほとんど辞めていきました。産休明け復帰したとしてもこの残業時間では育児に耐えられないという諦めの故です。結果、派遣業界(特に独立系)で働く女性社員は「太く短く」の会社人生になってしまい、言葉は悪いですが女性人材の使い捨てとその後任探しでここまで来ました。
派遣会社元経営陣の片割れとしての本音を言うと、「太く短く」で辞めた女性メンバーの中には失礼ながらもてあましていた方もいて、これはこれで渋い顔して「残念やなあ」といいながらも内心喜んで(?)辞表を受け取ったケースもありましたが、これは少数で、そのほとんどは本心残念でありました。今、昔やむをえず退職していった女性社員の顔を思い浮かべると、もしそのまま在職していたら軽く管理職になれた人材がごまんといました。もし彼女達が今でもいたら現在の男性社員の半分は昇進遅れていたことでしょう。
ここで話は飛びますが、ブッシュ大統領の父上であるブッシュパパは太平洋戦争時に雷撃機乗りで父島沖で日本軍の対空砲火に撃墜され、 尾翼で頭を打撲しましたが、パラシュートが開き無事着水し、救助のために父島東方に配備されていた潜水艦に救助されました。撃墜されるかもしれないパイロットを救助するため用の潜水艦を作戦区域に配備しているとはさすが人命を大事にするアメリカらしい話ですが、人命尊重以外のもう一つの発想として、失った機体は作れるが何年もの訓練を重ねたベテランパイロットは代わりが効かず、この人材を失うことはそれまで投下した莫大な訓練教育費用と時間の大きな損失であり、救出するに足る値打ちがあるとの冷静な判断があるといいます。救助されたブッシュ中尉は1ケ月を潜水艦で過ごし母艦に帰艦しましたが、 帰艦した彼を迎えたのは「さあ、また出掛けよう。 ジョージ」と書かれた生還を祝うデコレイション・ケーキであったとのことです。その一方で日本海軍は予科練で鍛えに鍛えた歴戦のパイロットまでも片道の特攻隊に送ったのです。合掌。
入っては辞め、補充しては辞め、という人材の「垂れ流し」状態、社内に経験が蓄積しない、いつも教育で悩む、しかしそれを仕様がないものとしてそれを取り立てて問題にしない派遣業界の伝統的な悪弊に対しての一つの対策が上記リクルートスタッフィングのママさん部隊です。全ての派遣会社が取れる方策ではありませんが、派遣会社のマネジメント課題として、女性(優秀な、という条件をつけましょう)が長く働ける就業環境、制度の検討を提起するしだいです。
何ですか?優秀な女性社員はいてもらっていいが、そうでないのはあまり長くいてもらっても困る?そうですか。それを言うなら男性社員についてもいいましょう。